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シチリアからの風~マンマに教わったとっておきレシピ~

シチリア島トラーパニ在住でシチリア料理・菓子 スペシャリストの佐藤礼子さんから、シチリアの暮らしと食、とっておきのレシピをお届けします。

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11月2日はシチリアのお盆です

サマータイムが10月最後の日曜日で終了。
そのため11月に入ると日も短くなり、ようやく夏気分も終わって、ちょっと秋の雰囲気が漂ってくるシチリアです。
シチリアの食文化がキリスト教と共に発展してきたことは、このコラムを愛読いただいている方はお気づきかと思いますが、11月は昨年ご紹介した「ワインができる日」の他に、私がシチリアにくるきっかけともなったお祭りの日があります。
今月はそんな私の想い入れが強いシチリアの行事をご紹介します。

シチリアのお盆は11月

8月15日を中心とした期間に行われる日本のお盆。
祖先の霊を迎え入れ、そしてまた送り出す、という日本のお盆ですが、実はシチリアにも同じようなお祭りの日があります。
それが11月2日の「死者の日」。
ちょっと名前は怖い気がしますが、日本のお盆同様、天国に行った死者の魂が現世に戻ってくる日と言われ、この日は家族で集まってお墓参りに行ったり、食事をしたりする日でもあります。
この日は祝日ではないため、祝日となっている11月1日の全ての聖人の日に合わせて仕事を休んで連休にする人もたくさんいます。

  • トラーパニは聖母マリア様への信仰が厚い街、多くの人がお墓にマリア様を飾っています。
	トラーパニは聖母マリア様への信仰が厚い街、多くの人がお墓にマリア様を飾っています。
  • お墓の前には必ずお花屋さんがあります。お墓の前には必ずお花屋さんがあります。
  • お墓のスタイルは色々ですが、これは家族の小さなチャペル。お墓のスタイルは色々ですが、これは家族の小さなチャペル。

死者がお土産を運んでくる!?

かつてサンタクロースが存在していなかったイタリア。
その代わり、この死者の日に亡くなった方々が現世に戻ってくるときにお土産を子供達に運んでくる、と言われていました。
私の夫も子供の頃には、クリスマスではなく11月2日にオモチャやお菓子などのプレゼントをもらった記憶があるそうです。
西シチリアに伝わる死者の日の子供のお菓子といえばPupi di Zucchero(プーピ ディ ズッケロ)。
シチリアにはプーピと呼ばれるマリオネットで、シチリアの歴史を語り継ぐ伝統があります。
かつて砂糖が貴重だった時代に、そのプーピの形をした砂糖菓子を子供達に送る習慣があったそうですが、現在はこのプーピに代わり、子供達が喜ぶように色々なキャラクターが並びます。
サンタクロースの登場で11月2日にプレゼントを贈る習慣も段々姿を消しつつありますが、私にとってはお菓子屋さんの店頭にこのプーピが並ぶのが毎年のちょっとした楽しみ。
何故なら、似ているような、似ていないような、ちょっと笑ってしまうようなキャラクターが勢ぞろいするからです。
そして、おばあちゃん達がこのプーピを選んでいる姿がとても微笑ましい。
このような死者の日の習慣は信仰心が厚いと言われている南イタリア独自の習慣らしく、北イタリアではこのような習慣はないと聞いた事があります。
同じイタリアでも土地によってその習慣が違うところから、かつてイタリアはそれぞれが独立した国であったことが伺えます。

  • パレルモのプーピ劇場。パレルモのプーピ劇場。
  • プーピとキャラクターの形をした砂糖菓子。プーピとキャラクターの形をした砂糖菓子。

シチリアのお盆のお菓子

シチリアの死者の日のお菓子と言えば「フルッタ・マルトラーナ」。
フルーツの形をしたアーモンドのお菓子です。
パレルモにあるマルトラーナ寺院の修道院で作り始められたお菓子であることから「マルトラーナ寺院のフルーツ」という名が付いたそうですが、今ではシチリア全土のお菓子屋さんに必ずあるシチリア名物。
死者の日の食卓にはフルッタマルトラーナが欠かせず、日本のようにお供えするのではなく食後に皆で食べます。
シチリアにアーモンドのお菓子が多いのは、シチリアがアーモンドの名産地だからです。
日本ではアーモンド菓子というと、すごく甘いお菓子でちょっと苦手、という方も多いかと思います。
ところがシチリアのアーモンド菓子は風味が豊かでとっても美味しい!
私もおすすめの食べ方は、フルッタマルトラーナを薄く切って、砂糖の入っていない苦いエスプレッソと一緒に頂く、というもの。
甘さと苦さが口の中で溶け合って、そこにアーモンドのふくよかな香りがフワっと広がります。
シチリアを旅する機会があったら是非お試しあれ!

  • これを見て修行したい!と思った私が修行していたお店のフルッタマルトラーナ。これを見て修行したい!と思った私が修行していたお店のフルッタマルトラーナ。
  • 伊勢海老のフルッタマルトラーナにビックリ!
		伊勢海老のフルッタマルトラーナにビックリ!
  • 魚のフルッタマルトラーナもリアル。魚のフルッタマルトラーナもリアル。

想い出のお菓子フルッタマルトラーナ

実はこのお菓子、私がシチリアに来るきっかけとなったお菓子でもあり、私にとってはとても思い入れの強いお菓子なのです。
マルケ州で料理留学していた頃、修行先をどこにしようか…と色々考えた時にイタリアのとある料理雑誌で見かけたのがこのフルッタマルトラーナでした。
大体のイタリア菓子は写真を見れば作り方が想像つく中、フルッタマルトラーナはいったいどうやって作るのか、まったく想像もつかず。
それをきっかけにシチリアの伝統菓子を調べてみたら、他にも謎のお菓子が沢山でてきて…。
よし!シチリアにフルッタマルトラーナを習いに行こう!と思ったのがシチリアに来るきっかけでした。
どこのお店で修行させてもらおうか…と色々と調べているうちに偶然見つけたのが今住んでいるトラーパニの近くの山の上の街にあるお菓子屋さん。
このお菓子屋さんが作るフルッタマルトラーナの美しいこと…まるで本物のフルーツみたい!
早速、直接電話で直談判して、修行させてもらえることになりました。
そして念願かなってのフルッタマルトラーナ修行。
オーナーのマリアおばあちゃんと職人のガエターノさんから直々に教わることができた貴重な体験でした。
フルッタマルトラーナが結んでくれたシチリアと私のご縁。
それが故に、死者の日が来ると、毎年留学時代、そしてシチリアに来た頃のことを想い出すのです。

  • 私が修行していたエリチェの老舗お菓子屋さんマリア グラマティコ。私が修行していたエリチェの老舗お菓子屋さんマリア グラマティコ。
  • 初めて一人で作ったフルッタマルトラーナはスイカ、かわいくできて大満足!初めて一人で作ったフルッタマルトラーナはスイカ、かわいくできて大満足!
  • 私のフルッタマルトラーナの師匠ガエターノさん。私のフルッタマルトラーナの師匠ガエターノさん。

レシピ

オッサ ディ モルティ

オッサ ディ モルティ

今月は家庭で作れる死者の日のお菓子をご紹介します。 その中でも有名なのは「オッサ ディ モルティ」。 「死者の骨」という意味のちょっと怖い名前が付いていますが、コロンとしたその形はとっても愛らしく。 ちょっと甘めのお菓子ですがレモン果汁を入れる事でスッキリ、さっぱり! エスプレッソまたは濃く淹れた緑茶と一緒にお召し上がりください。

レシピはこちら

佐藤礼子佐藤礼子 (Reiko Sato)
ラ ターボラ シチリアーナ主宰。シチリア島トラーパニ在住。シチリア料理・菓子 スペシャリスト。イタリア料理・菓子の知識を生かし、大手企業で洋菓子の商品開発、カフェの店舗企画に従事。2004年、シチリア(イタリア)食文化を学ぶため、イタリアに渡り、現地にてシチリア郷土菓子や家庭料理を研究しながら、食に関するコーディネートや通訳などで活躍しています。
「ポッカレモン有機 シチリア産ストレート果汁」を使ったレシピを監修していただいています。

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