シチリアからの風~マンマに教わったとっておきレシピ~

シチリア島トラーパニ在住でシチリア料理・菓子 スペシャリストの佐藤礼子さんから、シチリアの暮らしと食、とっておきのレシピをお届けします。

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3月19日はサンジュゼッペの日(父の日)とパン祭り

イタリアのカレンダーを見ると、日付の横に名前のようなものが書かれています。
さてこれはなんでしょう?
これはその日の聖人の名前。
イタリアには毎日、日替わりでその日の聖人が制定されています。
よくよく見ると、1日に1人の聖人ではなく何人もの聖人が名を連ねている日も多く。
ということは聖人は365人以上いるという事になります。
生きている間に善い行いをした人が、没後、時を経て聖人となるのですが、最近ではマザーテレサが聖人になったことは、日本でもニュースになりました。
イタリア人の名前は、聖人の名前を付けるのが伝統。
そして自分の名前が聖人と制定されている日は「第2の誕生日」とも言われていて、家族や友達からは「Auguri!!(アウグーリ!=おめでとう!)」と、電話やメッセージが来たり、街で会った友達からもお祝いの声をかけられたりします。
各街には守護聖人がいるのですが、その聖人の日はその市だけ祝日となります。
例えば私の住むトラーパニ市の聖人は「聖アルベルト」。
アルベルトの日は8月7日なのでその日はトラーパニ市は学校もお店もお休みとなります。

  • イタリアのカレンダーイタリアのカレンダー
  • トラーパニ新市街にある聖アルベルトの像トラーパニ新市街にある聖アルベルトの像

3月19日は父の日とパン祭り

このように、日常的にキリスト教が身近にあるイタリアの生活ですが、父の日もまたキリスト教とかかわっています。
なぜならイタリアの父の日は3月19日、その日はキリストの養父、San Giuseppe(サン ジュゼッペ=聖ヨセフ)の日だからです。
この日は日本の父の日と同じように、子供がお父さんに敬意を表してプレゼントをしたり、感謝の気持ちを伝えたりする日です。

ジュゼッペは大工で非常に正しく慈悲深く、貧しい人にはパンを分け与える心優しい人でした。
そのため、キリスト教上では「孤児や貧者の保護者」とも言われていました。
そんな言い伝えから、トラーパニ近郊の街では3月19日前後の週末に、キリスト教への信仰をあらわし祈りを捧げるための「パン祭り」が行われるようになりました。
いくつかの小さな街で行われる「サン ジュゼッペのパン祭り」ですが、その中でも一番大きなお祭りを行う街、サレミ。
サレミはトラーパニの内陸部にあるとっても古い趣のある街。
石畳が続く旧市街を登るとかつてのお城があって、そこから眺める景色は絶景!

  • サレミの街並み/お城サレミの街並み/お城
  • サレミの街並み/お城

飾りパンで溢れるサレミの街

街へ入るとお店のショーウィンドウ、壁、街角、、、、とっても細かい細工がされているパンがあちらこちらに飾られています。
教会に入ってみると、様々な形をしたパン細工が一面に飾られた立派な祭壇。

  • 街の入り口の門にもパン飾り街の入り口の門にも
    パン飾り
  • 宝飾店のショーケースにもパン飾り宝飾店のショーケース
    にもパン飾り
  • パン飾りのお土産パン飾りのお土産
  • 祭壇祭壇
  • 祭壇中央の大きな飾りパン祭壇中央の大きな飾りパン

「これはアルタ―レ(イタリア語で“祭壇”という意味)と言ってね。麦の形は豊作を、お花は春の訪れを、孔雀は繁栄を、、、パンの形一つ一つに意味があるんだよ。」

かつてパンは非常に貴重な食べ物でした。
そのパンで自然界の様々なものを象って捧げる事で、幸せを祈っていたのです。

土台は木で作り、中央には大きな飾りパンが6つ(これにも1つ1つ意味があります)。
オレンジを飾り、後ろ側には聖家族の絵、木枠の横側には大工だったジュゼッペの仕事道具の形をしたパンを飾るなど、様々な決まり事を守りながら祭壇は飾られていきます。

このお祭りに使われるパンは1か月以上も前から、地元の女性たちによってすべて手作りで作られます。
祭りの最中、街の一角でパン作りをしている女性に聞いてみたところ、
「パンは細かい細工をするために水分量がすごく少なくてね。捏ねるのも一苦労なのよ。捏ねた後は、ひとつひとつ丁寧に形を作っていくの。骨の折れる仕事だけど、みんなでおしゃべりしながら作るから楽しいわ。それに街の伝統は引き継いでいかなきゃいけないしね。」
こう語りながらひとつひとつパンを丁寧に象っていました。

  • パン飾りを作る女性たち
  • パン飾りを作る女性たち
  • パン飾りを作る女性たち
パン飾りを作る女性たち
  • 飾りパン
  • 飾りパン
  • 飾りパン
  • 飾りパン
  • 飾りパンは寄付金をするともらえます

飾りパンは寄付金をするともらえます

101皿の夕食の儀式

サレミの街ではパンのほかに「サンジュゼッペの101皿の夕食」という伝統儀式もあります。
これはキリスト、母マリア、養父ジュゼッペに模した地元の人が祭壇に座り、キリストに模した子供が101皿の料理を食べる、というもの。
これは神への感謝の気持ちと信仰心をあらわす儀式。
今では代表して1人が101皿を少しずつ食べるのですが、かつては食に困る人達に本当に食事を振る舞っていたそうです。
サレミの街ではこの儀式の最中にパスタとフリッタータ(卵焼き)を訪れた人々に振る舞います。
昨年、パン祭りを訪れた際に市役所の前でこの儀式を行っていて、ちょうど振る舞っていたので私も食べてみたところ、これがビックリ!
砂糖で調味された甘いパスタに、これまた甘いフリッタータ!
昔はすごく貴重だった甘いものを、信仰の印として捧げるため、甘いパスタやフリッタータが誕生したそうです。
最初はビックリしたけれど、食べているとちょっとくせになりそうな・・・。

  • 101皿の夕食の儀式 パスタを配る101皿の夕食の儀式
    パスタを配る
  • 甘いパスタ甘いパスタ
  • 甘いフリッタータ甘いフリッタータ
  • 101皿の夕食の儀式101皿の夕食の儀式
  • 儀式の前のセレモニーでバンドが演奏儀式の前のセレモニーで
    バンドが演奏

サンジュゼッペの日のお菓子

3月19日はお菓子屋さんに長い行列ができる日でもあります。
それはこの日には「スフィンチョーネ ディ サンジュゼッペ」という名のお菓子を食べる習慣があるから。
シュー生地を揚げた大きな生地の間にたっぷりのリコッタクリームを挟んだこのお菓子。
げんこつよりも大きいそのボリュームは圧巻!
食べてみると思っているより非常に軽く、上に乗っているオレンジピールがアクセントとなって、もう一口、もう一口、と言っている間にいつもひとつ全部食べてしまうという危険なお菓子です。

シチリアには「この日にはこれを食べる!」というキリスト教と関わる食事やお菓子がとても多く、人々のキリスト教への信仰心の厚さが感じられると共に、あ~今年もこの季節だな~、、、と1年の中の季節の移り変わりも感じることができます。
今年はスフィンチョーネ ディ サンジュゼッペは手作りをしてみようかな?

  • スフィンチョーネ ディ サンジュゼッペ
  • スフィンチョーネ ディ サンジュゼッペ
  • スフィンチョーネ ディ サンジュゼッペ
スフィンチョーネ ディ サンジュゼッペ

今回のご紹介する料理は「レモンのパスタ」。
先日、友人のお宅に遊びに行ったときの事、たわわに成る庭のレモンを捥いできて、ささっと作ってくれたのがこの一皿。

  • レモンの木

レシピ

レモンのパスタ

レモンのパスタ

生クリームが入らないサッパリしたタイプのレモンのパスタです。
ベーコンのコクとレモンの甘酸っぱさがとてもバランスよく、ベーコンのピンクとイタリアンパセリのグリーンの色合いも春の訪れを感じさせてくれます。
シチリアではショートパスタをよく食べます。
このパスタを作ってくれた友人も「ショートパスタは色々な形があって楽しいわ!」とショートパスタが大好き。
今回は春も近いので、蝶々の形をしたファルファッラというショートパスタを使いました。
もちろんスパゲティやリングイネなどのロングパスタでも作れます。レシピはこちら

佐藤礼子佐藤礼子 (Reiko Sato)
ラ ターボラ シチリアーナ主宰。シチリア島トラーパニ在住。シチリア料理・菓子 スペシャリスト。イタリア料理・菓子の知識を生かし、大手企業で洋菓子の商品開発、カフェの店舗企画に従事。2004年、シチリア(イタリア)食文化を学ぶため、イタリアに渡り、現地にてシチリア郷土菓子や家庭料理を研究しながら、食に関するコーディネートや通訳などで活躍しています。
「ポッカレモン有機 シチリア産ストレート果汁」を使ったレシピを監修していただいています。

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