ニュースリリース

2013年12月03日 other

新しい殺菌法(交流高電界殺菌法)を利用した果汁製品の製造が始まります

フロンティアエンジニアリング,ポッカサッポロフード&ビバレッジ,農研機構
ポイント

・殺菌時の品質劣化を大幅に低減(変色は1/5、ビタミンCの減少は1/10に)できる新しい殺菌技術を開発

・さらに本技術を用いた殺菌装置の商業規模へのスケールアップに成功

・ポッカサッポロフード&ビバレッジが本装置で処理した製品の製造を近日中に開始

概要

農研機構は、従来の加熱のみによる殺菌法に較べて、熱による変色を約1/5、加熱臭の発生を約1/4、ビタミンCの減少を1/10などに抑えられる交流高電界殺菌(HEF-AC)技術、それを活用した殺菌装置を開発しました。

さらに、本技術の実用化に向けて、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社及び株式会社フロンティアエンジニアリングと共同で、様々な液体食品への適用実証や、装置のスケールアップ、ランニングコストの低減・耐久性の検証を行って参りました。

これらの成果をもとに、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社は、果汁食品の製造ラインに本技術を導入し、製品の製造を近日中に開始することとなりました。

予算農林水産省委託プロジェクト「平成9~13年度農林水産物における病原性大腸菌等の汚染防除に関する研究」、
総合食料局補助事業「平成15年度中小食品産業活性化技術開発支援事業」、
農林水産省「平成15~17年度民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業」、「平成19~20年度食品産業技術海外展開実証事業」
特許第2848591号, 第2964037号, 第4495647号, 第4349518号, 第4389220号,第4516860号, 第4606960号,
第4606961号

開発の社会的背景

従来の加熱のみによる殺菌方法では、熱に弱い食品素材の色、香りの劣化、栄養・機能成分の減少を抑えることが難しいため、食品の安全性を維持しながら、より高い品質を達成できる殺菌方法が求められていました。

研究の経緯

農研機構において、液体食品を電極で挟み、交流高電界をかけると、食品中を電気が流れることによって食品自体が発熱することに加え、電気的な殺菌作用が生じ、これらの相乗効果により、食品中に混入した微生物を迅速かつ効率的に殺菌できることが見いだされ、交流高電界殺菌(HEF-AC)技術と命名されました。しかしながら、この技術は当初、液体食品の沸点を超えた温度まで加熱するために電極部分を圧力容器で覆う必要があり、産業利用に不可欠な連続処理が困難でした。また技術の改良により処理規模を大きくできた場合でも、さまざまな液体食品について同様の殺菌効果を得られるかについて確認する必要がありました。

そこで、農研機構は、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社および株式会社フロンティアエンジニアリングと共に、HEF-AC技術を製造現場に導入するために、平成15年度中小食品産業活性化技術開発支援事業において、圧力容器を必要としないよう技術の改良に成功しました。その成功を受けて、平成15~17年度民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業において、開発した毎時60リットルの液体食品を殺菌処理できる装置によって、果汁、茶飲料、コーヒー飲料の殺菌など幅広く適用できることを実証しました。また、平成19~20年度食品産業技術海外展開実証事業において、開発した毎時2トンの液状食品を殺菌できる装置によって、殺菌試験、製品の品質検査、製品の保存試験を行い、食品製造に問題がないことを確認しました。さらに、事業終了後から現在まで、実際の製造ラインを模して、連続運転試験、装置の耐久性試験、製品製造コストの検討を重ねてきました。このたび、これらの成果を基に、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社の新工場に導入する毎時5トン処理可能な市販の果汁製造ライン用の殺菌装置を完成するに至りました。

研究の内容・意義

試作プラント規模のHEF-AC装置を用いて、液体食品に微生物を添加した後、食品の温度ごとの殺菌効果を検証しました。食品中の微生物を十分に殺菌するには、食品の温度を殺菌可能温度まで上げた後、一定時間温度を維持する必要があります。例えば、従来の加熱殺菌技術の中でも食品の劣化が少ない、高温水蒸気などで加熱する超高温加熱殺菌処理では、オレンジやレモンの果汁で汚染が問題となる好酸性耐熱菌の芽胞は、数十秒かけて110度程度まで昇温し、その温度を30~60秒程度維持して殺菌するところ、HEF-ACは、0.1秒で113度まで昇温し、その温度を1秒間維持すれば殺菌できました。また、食品で問題となる他の菌についても温度を適切に設定すれば、短時間(2秒以内)で殺菌できました。

また、加熱処理とHEF-AC処理の成分への影響を、オレンジ果汁において、β-カロテンと還元型ビタミンCの量を指標として比較したところ、HEF-AC処理は加熱処理よりも影響が少ないことが分かりました(図1)。また、レモン果汁の色と香りにおいても、果汁の褐変度(YI値)と加熱臭の原因成分である5-ヒドロキシルメチルフラン(5-HMF)を指標として比較したところ、HEF-AC処理は加熱処理よりも影響が少ないことが分かりました(図2)。

実機規模のHEF-AC装置でも、レモン果汁を処理し、スケールアップに伴う殺菌効果や品質の低下が生じないことが確認されました。さらに、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社において、長期間の連続運転試験を行った結果、本技術を用いた製品の製造が可能であると判断し、このたび、商業的に使用するための最大一時間当たり5トンの連続処理装置を完成させ、商品の製造に着手することとなりました。

図1 図1

今後の予定・期待

HEF-AC技術は、殺菌だけではなく、酵素の失活にも優れた性能を発揮するため、幅広い応用範囲が期待されます。今後は、果汁以外のさまざまな液体食品にも応用し、安全性を維持しながら、より高い品質を得られる食品加工技術として普及することが期待されます。

用語の解説

交流高電界殺菌法

陰極と陽極の距離1cmにつき1kV以上の電圧をかけた電極間に、液体食品を連続的に流すと、食品自体が瞬間的に発熱することに加えて、電気的な殺菌作用が生じ、食品中に混入した微生物が迅速に殺菌されることを活用した殺菌法。なお、20kHzの交流電流を用いて周期的に陰極と陽極が交代させることで、電気分解で発生するイオンによる電極の損耗を防いでいる。

以上